抄録
寒冷地に栽培される飼料用トウモロコシは,しばしば低日射,低温条件に遭遇し生産が不安定化する。本研究では物質生産に強く影響をおよぼす要因の一つである日射条件と生育の関係を検討した。全生育期間にわたる遮光処理は地上部重を低下させ,とくに雌穂重の低下が著しいことが認められた。また,この傾向は遮光強度が強いほど大であり,さらに遮光を受ける生育段階,すなわち生育初期(雄穂抽出前),生育中期(絹糸抽出1週間前より約1ヵ月間),生育後期(登熟期)によって異なった。強遮光処理(自然光に対し60%)では,生育段階別の影響は生育中期における乾物重低下が最も顕著であり,地上部重は無遮光区100%に対し69〜80%に低下し,雌穂重は57〜60%に激減した。この減収の程度は全生育期間を強遮光した場合に相当する強い影響であった。ついで低下の著しかったのは生育後期の遮光処理であった。しかし生育初期遮光の影響は殆んど認められなかった。一方,弱遮光処理(75%)でも生育段階別の影響は強遮光処理と同様の傾向を示したが,その低下は軽度であった。また,生育初期遮光区の地上部重および雌穂重は無遮光区よりもむしろ高く,栄養生長期の植物は低日射に対して形態的,生態的に適応が可能であり生育後半に回復の余地が残されていると考えられた。以上のような遮光処理と生育との関係については品種間差異があると推察された。