抄録
5ヵ年次にわたる全地上部乾物増加,葉身乾物増加,葉面積増加のロジスチック式のパラメーターを,季節毎に平均し,各季節の平均的な回帰式を得た。これらの回帰曲線式をもとにして,イタリアンライグラス個体群形成にともなう全地上部乾物増加,葉身乾物増加,葉面積増加の相対関係の推移並びにそれらの季節変化について検討し,次の結果を得た。(1)全地上部乾物増加と葉身乾物増加との関係には,次の2次式がよく適合した。L_w=μW-νW^2但し,L_w,葉身乾物重,W;全地上部乾物重,μとνとは相対生長係数。(2)各季節の平均的な全地上部乾物増加と葉身乾物増加との相対生長係数は,次の近似式で示すことができた。秋L_w=0.9W-0.000519W^2 50<W<450g・m^<-2>冬L_w=0.53W-0.000055W^2 100<W<600g・m^<-2>春L_w=0.6W-0.000385W^2 120<W<600g・m^<-2>(3)各季節の平均的な葉面積比(LAR)の推移は,次の近似式で示すことができた。秋[numerical formula] 50<W<450g・m^<-2>冬L_a/W=23572/W+W/3.48 100<W<600g・m^<-2>春L_a/W=9728/W^<0.578> 120<W<600g・m^<-2>但し,葉面積(4)各季節の平均的な比葉面積(SLA)の推移は,次の近似式で示すことができた。秋L_a/L_w=500-0.238W 50<W<450g・m^<-2>冬L_a/L_w=48142/W+W/1.75 100<W<600g・m^<-2>春L_a/L_w=126.34/W^<0.04>-1.092 120<W<600g・m^<-2>(5)春には葉身への物質分配は少ないが,比葉面積がきわめて大きいので,急速な葉面展開が可能である。個体群形成とともに急激な比葉面積の低下がおこるが,これは高いNARの持続につながると思われる。このような春の比葉面積の推移は,Spring flushの一端を示している。(6)春に比葉面積が特に大きくなるのは,気温,日射の直接的な影響よりも,むしろ発育段階-生殖生長への移行に関わる現象と考えられる。