抄録
好適な環境条件下でオーチャードグラスの幼植物を栽培し,分げつの発生と分げつ芽の形成・発育を外部および内部形態的に観察した。(1)オーチャードグラスにおいては,母茎のある葉の出現は,3節下の分げつの第1葉の出現とほぼ一致し,イネ・ムギ類と基本的に同様な同伸葉・同伸分げつ性が示される。(2)主茎および各分げつから同時的に出現する葉-対応葉は,その伸長過程においてイネ・ムギ類と類似の相似生長性を示した。(3)主茎および出現または出現直前期の1次分げつの茎頂部では,それぞれの対応葉は同時的に分化し(=同分化葉性),さらに分化した幼葉は互いに相似性を維持しながら発育すると認められた。したがって,外部形態的特徴としての同伸性は,主茎と各分げつ茎頂における幼葉の同分化葉的分化と,その後の相似的生長の結果であると考えられる。(4)母茎茎頂で形成された分げつ原基が発育して出現分げつとなるまでの過程における分げつ芽の幼葉分化は,母茎や出現した分げつ間で認められた同分化葉性に比し,より急速に進行すると思われる。この分げつが発生するまでの過程は,分げつ原基が発育して,その外部を包む母茎葉の完全展開時に生長円錐と数枚の幼葉からなる分げつ芽の形態を整えるまでの過程-分げつ芽形成過程と,この分げつ芽がその第1葉を急伸長して外部に出現するまでの過程-分げつ芽伸長過程に分けることができよう。