日本草地学会誌
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寒地型イネ科牧草の分げつ習性に関する形態学的研究 : II.劣悪環境条件下におけるオーチャードグラス幼植物の分げつ発生の規則性とその攪乱について
伊東 睦泰
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1982 年 28 巻 1 号 p. 74-81

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抄録
人工光または自然光による光の強さを2段階,施肥水準を2段階としてそれぞれを組み合わせた条件下でオーチャードグラス幼植物を栽培し,分げつの発生および分げつ芽の形成・発育の過程を観察した。(1)光不足,あるいは肥料不足による劣悪環境条件下においては,幼植物の分げつ発生の規則性は様々に攪乱される。しかし,個々の分げつ芽の動向は,劣悪条件の強弱に応じ,規則的に伸長して正常に分げつ発生する(主茎,分げつともに出葉だけが遅れ,相互の同伸性は維持される)か,まったく伸長せず,外部に出現しないか,のいずれかの形に分離し,分げつの出現がその母茎の対応葉の出現より著しく遅れるような現象は認められなかった。(2)強度の遮光により,分げつ発生を抑制される場合においても,分げつ芽の形成過程は正常に分げつ発生する個体と基本的には同様であった。すなわち,分げつ原基は,collar状を呈して隆起を始めた母茎幼葉の3〜4節下で膨起し,以後,正常に分げつ発生する個体とほぼ同様の経過で発育し,母茎の最上位展開葉n腋にある時,生長円錐と約3枚の幼葉からなる分げつ芽の形態を完成する。(3)しかし,この分げつ発生を抑制する条件下では,芽としての形態を完成した分げつ芽Tnは,次の分げつ芽伸長過程への移行に際し,第1葉の伸長が抑制されて母茎の対応葉との同伸性を発現しないまま,休眠芽となる。したがって,分げつ発生が正しく行われるか否かは,芽の形態を完成した分げつ芽Tnの第1葉が,3節上の母茎葉n+3と相似的に発育するか否かによって決まると推察された。
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© 1982 著者
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