抄録
落葉広葉樹を伐採した結果,林床のミヤコザサが優占してミヤコザサ群落を形成した。その群落に攪乱方法の異なる処理区を設けて,シバ種子の混入した牛糞を播き,シバの発芽・定着に及ぼす影響を検討した。実験I.攪乱方法はミヤコザサ群落を抜根・耕起した区,火入区,蹄耕区および無処理区とし,シバ種子の混入した牛糞を表面散布した。さらに,翌春これらの区を分割して,放牧方法を変えた区を設けた。1)攪乱した翌年の植生は,耕起区:シロザーツユクサ群落,火入区:シロザーErigeron spp.群落,蹄耕区:ヨモギ-ミヤコザサ群落,無処理区:ミヤコザサ-ヨモギ群落となり,二次遷移にみられる植生となった(Table 2)。2)シバの発芽・定着数は,耕起区が多く,無処理区が少なかった(Table 1)。3)耕起区では,待期放牧を行うことにより,シバ幼植物の生存率が高くなったが,無処理区では,その効果が認められなかった。実験II.播種前年に放牧圧を変えて,ミヤコザサ群落を攪乱した。1)放牧圧処理を行った翌年の植生は,軽放牧区がミヤコザサの優占する群落であった。重放牧区では,前者と比較して,ヒメムカシヨモギの積算優占度が高くなった(Table 4)。2)シバの発芽・定着数は,軽放牧区より重放牧区が多く,越年後の生存数も同様であった(Fig.2)。以上の結果から,ササ型草地からシバ型草地を造成するには,人為的攪乱を加えて,1年生草本が侵入・優占した群落,すなわち,二次遷移の初期のステージにみられる植生に戻す必要がある。例えば,十分に放牧を行い,ササを減少させ,Erigeron spp.などの1年生草本が侵入してから,シバを播種する必要がある。