日本草地学会誌
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根冠切除,トリヨード安息香酸およびシクロヘキシミドがトウモロコシの種子根の根端細胞の分裂頻度に及ぼす影響
広田 秀憲加藤 芳彦
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1983 年 29 巻 2 号 p. 109-115

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抄録

トウモロコシ(Great Bell)の発芽種子を22±1℃,12時間照明の室内で対照,根冠切除,10^<-7>Mトリヨード安息香酸(TIBA)および5×10^<-6>Mシクロヘキシミド(CHM)添加の4条件で通気して水耕し48時間後種子根を採取し,パラフィン法によって10μmの連続切片の永久プレパラートを作成後根端組織の核分裂像を調査し次の結果を得た。1.総分裂数は根冠切除区,TIBA区,対照区,CHM区の順に高かった。2.分裂の範囲は処理により差があり対照区とTIBA区では,根端から200〜900μmに旺盛な分裂がみられ,1,200μm以後には分裂像がみられなかった。根冠切除区では根端から500〜800μmに旺盛な分裂がみられ,1,400μm以後では分裂像がなかった。3.根冠切除区およびTIBA区では中心柱と皮層に分裂像が多くみられた。4.CHM区では表皮および皮層の外側の細胞の層がヘマトキシリン液に染色せず液胞化していた。5.分裂像の偏在性を検討した結果,中心柱,皮層ともに同じ位置に分裂像が多くみられたのは全体の20%であり,両組織で近接してみられるものや,いずれかの組織に明らかに偏在した分裂像があるのを含めると全体の70%となった。この傾向は根冠切除区とTIBA区で著しかった。根が生長するためには根端部の各組織の分裂活動が旺盛に続く必要がある。分裂活動の偏りが定期的に移動することにより首振り生長を続けるものと考えられる。そして屈曲生長は根の中のオーキシンが過剰となりエチレンが発生し,根の生長阻害が起こるときの現象であるとする既報の推論を細胞学的に裏づけることができた。

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© 1983 著者
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