日本草地学会誌
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オーチャードグラスの生産性に関する研究 : VII.日射エネルギー利用効率に及ぼす窒素施用量の影響
楠谷 彰人李 柱三後藤 寛治
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1983 年 29 巻 2 号 p. 116-121

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抄録

早晩性および草型の異なるキタミドリ(早生・中間型),Latar(中生・茎重型),S 143(晩生・茎数型)の3品種を供試し,日射エネルギー利用効率に及ぼす窒素施用量の影響とその品種間差異を調査した。施肥水準は10a当り窒素0kg(N_0),7.5kg(N_1),15kg(N_2)および30kg(N_3)の4水準である。1.日射エネルギー利用効率(E_u)はLatar,キタミドリ,S 143の順に大きく,3品種ともN_2までは直線的に増加したが,LatarとキタミドリではN_3で減少する傾向をみせたのに対し,S 143はN_3まで増加した。E_uの増加割合は,Latarとキタミドリはほぼ同じであり,S143で低かった。2.遮蔽率(E_i)は,キタミドリとLatarではN_1からの増加は小さかったが,S 143はN_2まで直線的に増加した。エネルギー転換効率(E_c)は,N_2まで増加し,N_3では微増もしくは低下した。E_iとE_cに及ぼす窒素の影響は品種により異なり,キタミドリとLatarではE_cに,S 143ではE_iに強く現われた。3.比葉面積(SLA),葉身乾物重(LbW),ともに,多窒素区で大きくなった。C/F比に及ぼす窒素の影響は,キタミドリとLatarでは認められなかったが,S 143は多窒素区で高くなった。4.E_uとE_iは,出穂前には有意な正の相関関係を示したが,出穂後には有意な関係を示さなかった。E_uとE_cの間には,生育時期にかかわらず0.1%で有意な正の相関が認められた。5.SLA,LbWおよびE_cと葉身窒素含有率(LbN%)との間には比較的高い正の相関関係が認められた。6.窒素施用量の増加によるE_uの向上は,LbN%の増加によるE_cの向上とSLA,LbWの増加に伴う葉面積の拡大の相乗効果によるものと考えられた。

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© 1983 著者
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