日本草地学会誌
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異なった土壌水分条件下で栽培した数種暖地型マメ科牧草の乾物生産と葉面の拡散抵抗
北村 征生阿部 二朗西村 友三郎
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1983 年 29 巻 2 号 p. 122-130

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抄録

暖地型マメ科5草種:Macroptilium atropurpureum cv.Siratro(サイラトロ),Glycine Wightii cv.Cooper(クーパー),Desmodium intortum cv.Greenleaf(ダリーンクーフ),Stylosanthes guyanensis cv.Schofield(スコフィールド),およびCentrocema pubescence(セントロ)を5段階の灌水量(年間降雨2000,1500,1000,750,および500mm相当を日割りにして毎日灌水)の下で栽培し,乾物収量,T/R比,含水率,拡散抵抗および蒸散速度等を比較して,各草種の耐旱性を推定し,耐旱性発現機構について検討した。灌水量の減少にともなって,各草種の乾物収量は低下したが,その低下率から判断すると,クーパー<スコフィールド<サイラトロ<セントロ<グリーンリーフの順で低水分条件下の生育が良いことが明らかになった。灌水量の低下にともなう各草種のT/R比,含水率,および土壌中の有効水分の変化から,供試草種は,(1)サイラトロ,(2)グリーンリーフ,セントロ,および,スコフィールド,(3)クーパーの3つに分類できた。灌水量の低下とともに上記諸形質が,(1)では徐々に変化し,(2)では750mm以下になって大きな変化を示す。そして(3)では2000mmと1500〜750mmとの差は大きくないが,500mmになると大きな変化を示す。土壌水分と葉面の拡散抵抗および蒸散速度との関係を見ると,サイラトロは他草種とくらべて,かなり高い土壌水分条件下でも高い拡散抵抗,従って,小さい蒸散速度を示し,クーパーは土壌水分が高い水準であっても,その低下に鋭敏に反応して,拡散抵抗が増大する。他の3草種は上記2者の中間的な変化を示した。以上の結果より,サイラトロは土壌水分がわずかに減少してもT/R比は減少し,拡散抵抗は増大する。すなわち,他草種とくらべて,土壌水分の欠乏に対する形態的生理的適応能力が優れた草種であると考えられた。

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© 1983 著者
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