日本草地学会誌
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暖地型飼料作物の水ストレス耐性機構の解析 : II.異なった土壌水分条件下で粒培した暖地型飼料作物の生育と養水分吸収の草種間差
尾形 昭逸実岡 寛文松本 勝士
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1985 年 31 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

暖地型飼料作物,ダリスグラス(Da),ローズグラス(Ro),スィートソルガム(SS),トウモロコシ(Zm),ハトムギ(Ha)を用い,土壌水分をpF1.7〜2.0,pF2.3〜2.5,pF2.8〜3.0の3水準に変えて土耕ポットに栽培し,地上部・根部生育量,葉の水ポテンシャル,気孔抵抗,無機成分含有率を測定し,暖地型飼料作物の水ストレス耐性機構の解析を行なった。(1)pF1.7〜2.0区に対するpF2.8〜3.0区の地上部相対生育量はDa>Ro>SS>Zm>Haの順で,水ストレス耐性の強い草種としてDa,Ro,弱い草種としてZm,Haがあげられた。(2)pF2.8〜3.0区での気孔抵抗はHa>Zm>SS>Ro>Daの順に高く,水ストレス耐性草種ほど蒸散速度は大であった。また,葉の水ポテンシャルはHa>Zm>SS>Ro>Daの順に高く,水ストレス耐性草種ほど葉の水ポテンシャルの低下が大であった。さらに,葉の水ポテンシシャル(Y)と気孔抵抗(X)との間には次の一次回帰式が成立し,水ストレス耐性草種ほど回帰係数が大きい傾向にあった。Da:Y=-1.23X-2.72(r=0.977),Ro:Y=-1.19X-2.50(r=0.954),SS:Y=-0.90X-2.62(r=0.933),Zn:Y=-0.69X-3.41(r=0.989),Ha:Y=-0.65X-4.34(r=0.986)。(3)水ストレスにより根の生長は抑えられ,その程度はDa,Roで小さく,Zm,Haで大であった。(4)水ストレスにより無機成分吸収は著しく抑制され,その程度はHaで大であった。以上の結果から,暖地型飼料作物の水ストレス耐性機構の要因として,水ストレス下でも根圏を拡大させ,蒸散速度を高く維持することによって葉の水ポテンシャルをより低下させ,土壌よりの水分・養分吸収を低下させない機能があげられた。

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© 1985 著者
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