日本草地学会誌
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低湿重粘土水田の転換畑における飼料作物の生育特性 : II.転換初期における地下部生育の種間差と土層の酸化
青田 精一渡辺 好昭石田 良作
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1985 年 31 巻 1 号 p. 52-58

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抄録

低湿重粘土転換畑における飼料作物の地下部生育の年次変化及び種間差と土層酸化の関係について4カ年検討した。試験は長大作物(トウモロコシ,ソルガム),暖地型牧草(ローズグラス,グリーンパニック)と,参考に大豆の5種を供試して,当地の標準耕種法で栽培した。播種は5月中旬,刈取時期はトウモロコシ黄熟期,ソルガム出穂期に2回,暖地型牧草は3回,大豆は成熟期で,根系及び土壌調査は10月上旬一斉に行った。地上部収量は長大作物が勝ったが,根重は長大作物より暖地型牧草が多かった。各作物を通じ,転換1年目は根の上層分布割合は高く,最長根も非常に浅いなど,根の伸長阻害がみられた。転換後の経過年次とともに根は深部に伸長し,根圏の拡大がみられるが,その過程は急には進まなかった。作土下の伸長根の分布をみると,ソルガムは転換2年目,暖地型牧草は3年目で,前作物の水稲根跡の空隙を通過して深部に満遍なく伸長する根がみられるが,トウモロコシと大豆では伸長根の大部分が亀裂中に分布するなど種間差が明らかであった。最長根は4ヵ年を通じ,ソルガム>暖地型牧草>トウモロコシ>大豆の順に深く伸長した。また土層の酸化は最長根長に全く一致する形で進み,土層酸化に及ぼす伸長根の影響が推察された。しかし,亀裂の深さは大豆で最も進み,土層の乾燥過程は種間差が明瞭であった。作物の蒸散による土中からの吸水をpFの推移からみると,下層ではソルガムが供試作物中最も多かった。一方裸地区のpFは作付区に比して著しく低く,植生による土層からの吸水が確認された。

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© 1985 著者
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