日本草地学会誌
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放牧草地におけるチモシーの移植個体の動態
澤田 均津田 周彌
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1985 年 31 巻 1 号 p. 76-87

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抄録

放牧草地におけるチモシー個体群の生活史特性の変異と,それに与える環境効果と遺伝効果を明らかにするために,造成後17年を経過した草地に調査区(40×45m)を設定し,近接した細個体群間で相互移植実験を行った。すなわち,分げつと実生の移植実験を行い,生存率・生長量・種子繁殖と栄養繁殖量を調査した。生存率・生長量は移植場所によって異なり,放牧圧・植生の変異と,移植個体の生活史特性の変異が密接に関連していた。実生は移植当年の生長量が小さく,種子繁殖量も著しく少ないが,分げつの移植当年の生長量は大きく,種子繁殖量も多く,移植の際の生活史段階によって生活史特性が異なった。細個体群間で生活史特性に差がなく,採集環境に移植した方が他の環境に移植した場合よりも生存率が高く,生長量が多いという傾向もなかった。これらのことは,このチモシー個体群の生活史特性の変異が環境効果によって生じ,遺伝的効果による部分が著しく小さいことを示している。

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© 1985 著者
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