日本草地学会誌
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バヒアグラス(Paspalum notatum Flugge)の根の生長に及ぼす斜面方位の影響
上野 昌彦杉本 安寛平田 昌彦
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1985 年 31 巻 1 号 p. 104-109

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抄録

斜面方位のちがいによる環境の差異がバヒアグラスの根群の発達に及ぼす影響を調べ,傾斜地草地へのバヒアグラス定着と地形要因との関係を明らかにしようとした。試験は傾斜角30度をもち,二つの斜面がそれぞれ南・北面の人工斜面に栽培したバヒアグラスを対象として,1981年7月〜82年9月に行った。地上部は茎数密度,出穂状況,茎葉再生量,地下部については一次根の根数,伸長速度,根重などを調査し,環境要因として両斜面の日射量,地温,土壌水分の変化を測定した。得られた結果の概要は次の通りである。1)茎数密度は3月上旬〜5月上旬に両斜面間に差が認められ,南斜面が著しく多かった。2)茎葉日再生量はいずれの時期も南斜面が増加した。3)北斜面の一次根数は試験期間を通じて少なく推移したが,南斜面では秋と翌春に著しく増加した。4)南斜面では3月上旬に一次根の伸長開始が認められたが,北斜面では約2ヵ月遅れた。5)根重は5月および8月に有意差が認められ,いずれも南斜面が多かった。以上の南・北斜面間で示された生長のちがいは,秋〜翌春の日射量の差によってもたらされる地温の影響によるものと推察され,バヒアグラス定着促進のためには,地形条件の一つとして斜面方位の影響を考慮する必要のあることが示唆された。

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© 1985 著者
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