抄録
春の利用を抑制し,牧草の種子を結実,落下させ,自生した個体が密度並びに収量構成にどれだけ貢献しているかについて検討した。試験は,自生個体の放任区と除去区を主区,春の利用抑制程度が異なる春期無利用区と春1回利用区を副区,主要寒地型牧草の8草種・品種を副副区とする分割試験区法で行った。自生個体の貢献程度は,2年間の自然下種処理後,全区を同一時期に年5回刈取り,自生個体の放任区と除去区の差をもって貢献度を判定した。結果の概要は以下のとおりである。1)8月上旬まで利用を抑制することにより枯死個体が増加し,生存率が低下した。その程度は,ペレニアルライグラスとトールフェスクで大きかった。2)各草種とも自生個体の放任区の茎数は除去区に比べて多く,その程度は,春1回利用区より春期無利用区で大きかった。春期無利用区の中では,ペレニアルライグラスとオーチャードグラスのポトマックの自生個体数が著しく多く,春の利用抑制による既存株の生存率の低下をこれら自生個体が充分に補完した。3)自生個体の放任区の乾物収量は除去区に比べて有意に多く,とりわけ8月上旬まで利用しなかった場合に顕著であった。4)自然下種による増収割合の高い春期無利用区についてみると,自生個体の収量が草地全体の収量に対する貢献割合は供試草種の平均で29〜36%であった。草種ではペレニアルライグラスが著しく高く51〜62%であった。5)以上のように,自然下種は密度維持にも,収量増にも貢献していることが認められた。自然下種の適用に当っては,春に1回利用するよりは春の利用を行わずに適用した方がその効果は高くなり,また,適用草種ではペレニアルライグラス,オーチャードグラスなどが有望であると思われる。