日本草地学会誌
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ルーメン内微生物による牧草窒素の利用に関する研究 : 2.微生物によるアンモニア利用における炭水化物および脂質添加の効果
田野 仁柴田 章夫
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1985 年 31 巻 3 号 p. 322-331

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抄録
前報で牧草中の窒素化合物はルーメン内微生物により容易に分解され過剰のアンモニアが生成される事を認めたので,本報告は牧草摂取下の動物におけるルーメン内微生物のアンモニア利用について,共存炭水化物および脂質の効果をin vitroで検討した。第1に,アルファルファ乾草給与ヤギのルーメン搾汁(Strained rumen fluid)を用い,各種炭水化物を添加してin vitroで1時間培養し,アンモニアの濃度変化に及ぼす影響を比較検討した。単糖類のうちガラクトース,アラビノース,キシロース添加はグルコース,マンノース,フラクトース添加よりもアンモニア濃度の低下は大きかった。二糖類ではセロビオース添加の作用がマルトース,シュクロースよりも大きく,トレハロースの影響は小さかった。多糖類のうちセルロースの添加においては1時間の培養ではアンモニア濃度は変化しなかった。コーンスターチ,ペクチン添加では影響はわずかであったがキシラン,イヌリンの添加ではアンモニア濃度の低下が大きく,キシランの作用がもっとも強かった。用いた培養法は閉鎖系であるので,アンモニア濃度の低下は微生物に取り込まれた結果と考えられた。アンモニア濃度低下の場合にはVFA濃度が増加する傾向が認められた。このように効果の認められた可溶性炭水化物(ガラクトース,アラビノース,キシロース,セロビオース)は,ヘミセルロース,セルロースおよびペクチンのルーメン内発酵中間物質であり,この結果を牧草摂取条件下のルーメン内微生物の活性の面から論議した。次に,ルーメン搾汁を凍結乾燥イタリアンライグラス粉末と共にin vitroで2時間培養し,草から生成されるアンモニア量に対する2つの多糖類(コーンスターチおよびキシラン)と2つの脂質(コーンオイルおよびコーン'オイルフーツ')添加の影響を検討した。アンモニア生成量はコーンオイル添加では変化が認められなかったが,キシラン,コーン'オイルフーツ',コーンスターチ添加の順序をもってアンモニア生成の抑制が示された。キシラシ添加では対照の71%の生成量であった。VFA生産量およびpH低下についてキシラン添加の場合のみが有意な影響を示した。溶存ガスを補正したガス生成量もキシラン添加の場合にもっとも高まった。スターチに対するキシランの優位性は,ルーメン搾汁のみならずルーメン内容物(Whole rumen digesta)を用いた場合にも認められた。キシランの有効性は,牧草摂取動物のルーメン内微生物叢の特徴的な機能によるのではないかと指摘した。
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© 1985 著者
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