抄録
播種後14年経過したオーチャードグラス主体の永年採草地の深さ55cmまでの根群域における粗孔隙の形態を土壌の物理性,造影剤によるX線造影法で求められる孔隙形態と根径より検討した。土壌の物理的性質はI層部分(0-10cm)がち密で,排水や牧草生育に関係する粗大間隙や有効間隙が少なく透水性も低い。II層部分(10-35cm),III層部分(35cm-)はち密度が低く粗大間隙や有効間隙が多く透水性も高い。三次元的にX線造影法で求めた粗孔隙は,I層部分の一部を除くと各層とも植物根(牧草根)に基づく管状の根成孔隙が主体であった。孔隙形態はI層部分で波状の亀裂に沿って垂直方向よりも水平や斜め方向に不規則に示された。II層部分は垂直方向に伸びた太い孔隙と水平方向に派生した細い孔隙が一定間隔で明瞭に多数示された。III層部分は前植生に由来する太い孔隙が主体であった。影像孔隙径は0.37mm-0.85mmの範囲で下層部分ほど太いが,牧草根の直径は0.30mm-0.19mmの範囲で下層部分ほど細い。この孔隙径と根径の差は,pF試験で求めた孔隙分布や透水係数の値ともよく対応していた。永年採草地の根群域における粗孔隙の形態は,排水領域において大半が牧草根に由来する管状の根成孔隙にもとづいていた。