日本草地学会誌
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飼料作物・牧草に付着する乳酸菌の分布とその乳酸発酵特性
蔡 〓民大桃 定洋熊井 清雄
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1994 年 39 巻 4 号 p. 420-428

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抄録

愛媛県および栃木県下から合計33草種350点の飼料作物・牧草をサイレージ調製の適期に採取し,草種別の乳酸球菌,乳酸桿菌,一般細菌,糸状菌および酵母数を調査した。また,数草種を選定し,植物体の部位および生育ステージを分けて,それらに付着する微生物数を計測するとともに,愛媛県と栃木県における飼料作物・牧草に付着する微生物相の地域的差異についても検討を加えた。さらに,飼料作物・牧草から分離した137株乳酸菌を細胞形態によって球菌と桿菌とに区分し,それらの乳酸菌の発酵形式と生成乳酸の光学異性を測定した。得られた結果を要約すると以下のとおりである。1)飼料作物・牧草に付着する乳酸菌,一般債菌および糸状菌・酵母数はいずれもトウモロコシ>ソルガム>マメ科牧草>青刈飼料作物>暖地型イネ科牧草>寒地型イネ科牧草>根菜類の順であった。また,一般細菌および糸状菌・酵母菌数は,いずれの草種においても乳酸菌より顕著に多かった。2)飼料作物・牧草に付着する微生物相は全般に愛媛県が栃木県より多く,その地域的差異が示唆された。3)植物体の部位別微生物相は,茎と葉で類似し,花・穂は茎・葉より高い菌数レベルを示した。4)生育ステージ別の微生物は,いずれも栄養生長期,節間伸長期,出穂期,開花期,乳熟期,成熟期と生育ステージが進むにつれて菌数が増加した。また,各生育ステージにおける乳酸球菌数および乳酸桿菌数はいずれもトウモロコシ>ソルガム>ギニアグラス>イタリアンライグラスの順であった。5)分離した相乳酸菌数に占める乳酸桿菌の割合は20-30%と低かったが,相乳酸菌に占めるホモ発酵型菌の出現比率は53-83%と高かった。6)乳酸異性体の生成比率は,DL型乳酸が62-80%と高かったが,L(+)型とD(-)型乳酸ではそれぞれ8-20%と6-24%と低かった。以上の結果,飼料作物・牧草に付着する微生物相は草種,植物体部位,生育ステージおよび地域の差異によって異なるが,いずれの草種においても,L(+)乳酸を生成する乳酸桿菌数が極めて低いことを明らかにした。

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© 1994 著者
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