日本草地学会誌
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シロクローバ-シバ共存草地におけるシロクローバの結実率と種子サイズのパッチ間差
澤田 均Syrus NAGHIZADEH福田 栄紀
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1994 年 40 巻 1 号 p. 85-94

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抄録
シロクローバ-シバ共存草地においてシロクローバはパッチ状(かたまり状)に分布する。本研究では以下の問題を明らかにするために,これらパッチのシロクローバの結実程度と種子サイズを調査した:草地内のシロクローバはどのくらいの効率で結実しているか? パッチ間,頭花の開花期の間に結実程度と種子サイズの差があるか否か? もし差があるとしたら,それはパッチの何らかの特性で説明されるような差であるか? 同草地内の10個のパッチから開花期ごとに3クラスの頭花を収集し,頭花当たり小花数,種子数,1莢当たり種子数,種子重,花柄長を測定した。全てのパッチをこみにした平均1莢当たり種子数は1.31±0.31(平均±標準偏差),レンジは0.92-1.83であった。1莢に1個以上の種子をもつ莢の割合は68.8±10.2%,3個以上の種子をもつ莢の割合は16.3±8.3%であった。結実率と種子サイズにパッチ間,開花期クラス間に有意な差があった。このうち結実率のパッチ間差は,パッチの大きさやパッチ当たり平均頭花サイズといった特性とは関係がなかった。しかし,パッチ当り平均花柄長との間には有意な正の相関関係があり,送粉昆虫によるパッチ選択の存在する可能性が示唆された。一方,開花期クラス間の差はきわめて複雑なパターンを示した。これらの結果から,草地内に点在するパッチは,草地全体で生産されるシロクローバ種子の数と質に寄与する程度が著しく異なることが明らかになった。さらに,この草地のシロクローバの結実の時空間的パターンが,ミツバチやマルハナバチの送粉行動の性質と関連していることが示唆された。
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© 1994 著者
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