日本草地学会誌
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担子菌類の酵素プロファイルとそのバガス分解プロセス
山田 豊中山 惠美子後藤 正和万木 豊高部 圭司苅田 修一藤田 稔
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2000 年 46 巻 3-4 号 p. 265-273

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抄録

トキイロヒラタケ(Pieurotus salmoneostramineus)とアラゲキクラゲ(Auricularia polytricha)を子実体原基を誘導せずにバガス培地で60日間培養し, バガス成分分解率(粗タンパク質, セルロース, へミセルロース画分の構成単糖類, ウロン酸, アセチル基, 酸性デタージェントリグニン, エステル型ならびにエーテル型フェノール酸), ならびにバガス細胞壁への作用機作をフィールドエミッション走査型電顕法, 透過型電顕法, 紫外線顕微分光法によって比較検討した。また, 稲わら(Oryza sativa L.)とバガスを主要炭素源とした「固形-液体」培養時におけるβ-グルコシダーゼ, カルボキシメチルセルラーゼ, キシラナーゼ, ペルオキシダーゼ活性を菌体放出型と菌体付着型に分けて調査した。トキイロヒラタケはその菌糸をさとうきび細胞壁に貫通させ菌体付着型酵素を発現させて分解作用することが, PATAg染色や過マンガン酸染色に対する高い反応性としてTEM観察された。また, トキイロヒラタケによる細胞壁構造の横断的な分解プロセスは, ヘミセルロース構成単糖類の非選択的分解性と一致した。一方, アラゲキクラゲ培養では, 菌糸に非接触なバガス細胞壁においても過マンガン酸染色に強い反応を示す中心部とPATAg染色に強い染色を示す周辺部から成るスポットが認められ, これは菌体放出型酵素の発現が高いことと一致した。これらの結果に基づいて, 担子菌培養によるイネ科藁稈のルーメン消化率の改善効果を高めるための菌種選択の要件について議論した。

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© 2000 著者
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