日本草地学会誌
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牧草の地帯区分に及ぼす地球温暖化の影響 : 1.寒地型牧草の栽培適地と生産量の変動予測
佐々木 寛幸神山 和則須山 哲男福山 正隆
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2003 年 49 巻 1 号 p. 23-27

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抄録

地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度は,近年著しく上昇している。わが国においても,地球の温暖化に伴い,寒地型牧草の適応地域が減少する等、各飼料作物の生育適地か変化し,それに伴い地帯区分も変更しなければならない事態が予測される。そこで,わが国の草地で利用される主要な寒地型牧草であるオーチャードグラス,トールフェスク,ペレニアルライグラスの3草種について,栽培適地と生産量の変動を予測した。現在と100年後の2次メッシュレベルの気候値の中から,平均気温と日射量のデータをニューラルネットワークモデルにあてはめて月別生産量を算出した。100年後の生産量を算出する際にはCO_2濃度の影響を示す式で補正した。これを積算することにより3草種の年間乾物生産量と夏枯れ地帯を示す地帯区分図を作成した。現在の地帯区分は、現状を比較的よく反映しており,各草種の特徴をよく表していると思われた。これを100年後に推定される地帯区分と比較すると,いずれの草種でも夏枯れ地帯が北上・拡大し,オーチャードグラスやペレニアルライグラスからトールフェスクに草種変更するだけでは対応できない地域か生じること,栽培可能地帯として残る地域では生産量が大幅に増加することなどか明らかになった。

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© 2003 著者
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