2023 年 69 巻 1 号 p. 7-15
北海道ではTilletia controversaによるコムギなまぐさ黒穂病が大きな問題となっている。コムギは畑酪混合地帯における栽培が多く,近接圃場の寒地型牧草や飼料用麦類を介したT. controversaの蔓延が懸念される。そこで本報では,本菌のこれらに対する病原性を調査した。北海道の発病圃場から採取した厚膜胞子を接種したところ,寒地型イネ科牧草4草種に対しては病原性は認められなかった。ライムギへの感染率は極めて低く,ライコムギにはある程度の感染が認められたが,コムギよりも発病穂率は大幅に低かった。寒地型イネ科牧草4草種が本病の伝染源になるとは考えられず,本病の汚染地域でこれらの栽培を控える必要はないと考えられる。一方,ライムギおよびライコムギの栽培については今後さらに検討する必要がある。