本稿では,現在の市街地の原型が形成された高度経済成長期の大阪東北部に注目し,セル・オートマトン(CA)を用いて市街地の面的拡大過程が適切に説明できるかを検証するとともに,その視点から当該地域の市街地拡大の特徴について考察した.CAシミュレーションによって,既成市街地を核とした拡大の過程や膨張した市街地どうしが連坦しさらに大きなかたまりになっていく過程から,局所的な相互作用の集積がマクロなスプロール現象を導いたことが確認された.一方でモデルの限界も見られ,東部丘陵地域および門真市南部などの飛地的な大規模集合住宅については現実に近いパターンを再現できなかった.以上のことから,現在の大阪東北部の市街地は,周囲の市街地とは連坦しない大規模集合住宅地に先導された市街地拡大過程と,既成市街地を基盤にして小規模な土地利用転換が累積した市街地拡大過程によって特徴付けられることが示された.