地理学評論 Series A
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論説
住民の転出入からみた首都圏郊外小規模開発住宅地の特性
――埼玉県富士見市関沢地区を事例に――
西山 弘泰
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2010 年 83 巻 4 号 p. 384-401

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抄録

本稿は,1960年代・1970年代にスプロールを伴って形成された小規模開発住宅地に着目し,住民の転出入から,これらの住宅地が郊外に立地する住宅地の中でどのような位置づけにあったのか,どのような役割を果たしていたのかを,戦後日本の住宅事情や社会・経済情勢から明らかにした.対象地域の埼玉県富士見市関沢地区は,1970年前後を中心とした中小ディベロッパーによる小規模開発・狭小敷地の建売住宅開発が連担し形成された住宅地である.関沢地区では,開発が始まる1960年代中頃から1980年代前半まで20代・30代を中心とする若年ファミリーが多く居住し,活発な転出入がみられた.居住者の多くは東京区部から転入し,数年で比較的近隣のより敷地規模の広い戸建住宅へ転出していった.しかし1980年代中頃から,関沢地区の戸建住宅では建替えが進み,活発な転出入がみられなくなり滞留傾向が強まる.このことから1960年代後半から1980年代前半における関沢地区の狭小な戸建住宅は若年層の仮の住まいとしてその役割を果たしていたと考えられる.そして関沢地区の戸建住宅において居住者の活発な入替えがあった背景は,第1にバブル崩壊までの持続的な地価や賃金の上昇,第2に家族向け賃貸住宅の不足,そして第3に分譲マンションが一般化していなかったことがあげられる.このことから,当地域にみられた狭小な戸建住宅は,当時の社会・経済情勢が投影された時代の産物であったといえる.

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© 2010 社団法人日本地理学会
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