地理学評論 Series A
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北海道函館市南茅部におけるコンブ養殖業の地域差
横山 貴史
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2011 年 84 巻 6 号 p. 610-625

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抄録
本稿は,北海道函館市南茅部におけるコンブ養殖業について,養殖方法の地域差とその条件を明らかにした.1950年代以降,南茅部ではコンブの増産と養殖の導入が図られた.1966年の1年促成コンブ養殖試験の成功により,安定したコンブ生産が可能となり,以降,1年促成養殖は南茅部全域に急速に広まっていくが,天然コンブと同様に2年の成長期間を必要とする2年養殖も継続された.地区別にみると,天然コンブの価格序列である浜格差において,高く評価される尾札部地区では,浜格差の影響を強く受ける2年養殖が重要であるが,低位である大船地区では,浜格差の影響を受けずに地区独自の取引を行うことができる1年促成養殖への特化が認められた.以上から,南茅部におけるコンブ養殖業の導入は,既存の天然コンブ漁の状況に基づき,地区ごとに異なった養殖方法の選択的受容につながった.その結果,地区間のコンブの収益格差の解消に結びついたと意義付けることができた.
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© 2011 社団法人日本地理学会
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