地理学評論 Series A
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84 巻, 6 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
論説
  • 瀬戸 芳一, 高橋 日出男
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 6 号 p. 529-552
    発行日: 2011/11/01
    公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー
    一般には,地上風の収束域では上昇流,発散域では下降流の存在が大気下層で期待される.本研究では,関東平野の夏季日中における局地風構造の把握を目的として,海風日の地上観測風から発散量分布を求め,顕著に認められた収束域と発散域との出現位置や時間的関係について検討した.その際に,風速の観測高度が観測点ごとに異なるため,周囲の土地利用状況をもとに各観測点における地表面粗度を推定し,対数則に基づいて統一高度における風速を求めた.
    午前中には,水平規模が10~30km程度の典型的な局地循環として,東京湾付近に海風循環,関東北部には谷風循環がそれぞれ独立して存在することが示された.午後になると,谷風循環に伴う群馬・埼玉県境付近の発散域は弱まって,関東北部の谷風循環は不明瞭となり,広域海風の発達に対応した循環構造の変化を観測風の解析からもとらえることができた.
  • 根元 裕樹, 中山 大地, 松山 洋
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 6 号 p. 553-571
    発行日: 2011/11/01
    公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー
    山梨県甲府盆地の西部,釜無川と御勅使川の合流部付近には信玄堤と呼ばれる治水施設群がある.信玄堤に関する歴史的研究では,近世以降に築かれた可能性や,自然に起こった流路変遷を固定化するための工事であるという見解が示されてきた.しかしながら,自然科学的研究は少ないため,本研究では洪水氾濫シミュレーションを行って,これらの治水能力を再評価した.
    現在の地形をスムージングした地形に各施設(石積出,白根将棋頭,竜岡将棋頭,堀切,竜王川除,かすみ堤)を配置し,dynamic wave model による御勅使川の洪水氾濫シミュレーションを行った.その結果,御勅使川の過去の流路が再現され,各治水施設が及ぼす影響を確認できた.これによると,石積出→白根将棋頭→堀切→高岩(岩壁)→竜王川除という順に設置されなければ,信玄堤は有効に機能しない.つまり,これらの施設は近世より前に短期間のうちに意図的に築かれた可能性が高く,既存の歴史的研究成果とは異なる結果が得られた.
  • 高阪 宏行
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 6 号 p. 572-591
    発行日: 2011/11/01
    公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,東京都のNTTタウンページデータベースに掲載されている164種類の約25万店舗に対し,近接性と集積量の2基準から商業集積地を設定し,GISを利用して商業集積地の規模,機能構成,分布を解明することを目的とする.東京都では1,143の商業集積地が設定され,規模に基づき5階層に区分された.最高位の商業集積地数は10,高位が13,上位が46,中位が269,低位が805識別された.階層ごとに商業集積地の機能構成を分析した結果,階層の制約を受けて立地する機能が125種類存在した.階層の制約を受けずに立地する店舗種類は39種類見出され,いずれの階層においても店舗の約40%を占めていた.さらに,立地パターンとしては,区部では最高位・高位・上位の商業集積地は分散分布をとり,区部と多摩地域の低位の商業集積地は,集塊分布であった.また,豊島区を例に,供給の地理を商店街レベルと店舗レベルで再現できた.
  • 小泉 諒, 西山 弘泰, 久保 倫子, 久木元 美琴, 川口 太郎
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 6 号 p. 592-609
    発行日: 2011/11/01
    公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,1990年代後半以降における東京都心部での人口増加の受け皿と考えられる超高層マンションを対象にアンケート調査を行い,その居住者特性を明らかにするとともに,今日における住宅取得の新たな展開を考察した.その結果,居住者像として,これまで都心居住者層とされてきた小規模世帯だけでなく,子育て期のファミリー世帯や,郊外の持ち家を売却して転居した中高年層といった多様な世帯がみられた.それぞれの居住地選択には,ライフステージごとに特有の要因が存在するものの,その背景には共通した行動原理として社会的リスクの最小化が意識されていることが推察された.社会構造が大きく変化し雇用や収入の不安定性が増大している中で,持ち家の取得は,機会の平等が前提された「住宅双六」の形態から,個々の世帯や個人の資源と合理的選択に応じた「梯子」を登る形態へと変化したと考えられる.
短報
  • 横山 貴史
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 6 号 p. 610-625
    発行日: 2011/11/01
    公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー
    本稿は,北海道函館市南茅部におけるコンブ養殖業について,養殖方法の地域差とその条件を明らかにした.1950年代以降,南茅部ではコンブの増産と養殖の導入が図られた.1966年の1年促成コンブ養殖試験の成功により,安定したコンブ生産が可能となり,以降,1年促成養殖は南茅部全域に急速に広まっていくが,天然コンブと同様に2年の成長期間を必要とする2年養殖も継続された.地区別にみると,天然コンブの価格序列である浜格差において,高く評価される尾札部地区では,浜格差の影響を強く受ける2年養殖が重要であるが,低位である大船地区では,浜格差の影響を受けずに地区独自の取引を行うことができる1年促成養殖への特化が認められた.以上から,南茅部におけるコンブ養殖業の導入は,既存の天然コンブ漁の状況に基づき,地区ごとに異なった養殖方法の選択的受容につながった.その結果,地区間のコンブの収益格差の解消に結びついたと意義付けることができた.
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