本稿では,1990年代末期から2000年代中期にかけて主としてイギリスにおいて展開した政策論的(再)転回をめぐる論争を跡づけ,その内容を考察した.この論争の焦点は,反計量の動きから多様なかたちで展開していった1980年代以降のイギリス地理学の動きが政策的関わりの観点からどのように評価することができ,どのような可能性を持っているのか,ということにあった.この論争では,これらの研究がローカルな地域/政府スケールの政策に関して強みを持っていることが強調される一方で,その他のアプローチとの建設的な補完関係の構築や統合的な活用の重要性も主張された.また,建設的なかたちで公共政策に貢献する地理学を実現するためには,複線的な戦略が必要であることも示唆されている.