本研究では,同業種型商業集積地の形成と変容について,東京都秋葉原地区を対象に考察した.秋葉原地区は,第二次世界大戦後,周辺地域に比べ相対的に地価が安いことで電気関係の店舗が集積した.その後,取扱商品の中心がパソコンからアニメ関係商品へと変化する際は,老舗電気店の果たす役割が大きかった.両業種ともさらに集積が進む段階になると,多くの新規店が出店し,駅前や表通りに進出する商店も現れた.主にパソコン関係店の場合は初期に開業した商店が,アニメ関係店の場合は近年に開業した商店が駅前へ立地した.アニメ関係の新規店は駅前や表通りへの進出が早く,地域にもたらした変化も大きい.また,アクセスが不便な雑居ビルの上層階にもアニメ関係店やメイド喫茶などが入居し,地価が安い裏通りの雑居ビルにも多くの店舗が入居している.これらにより,秋葉原地区は小規模な店舗が集積する商業集積地としての性格を維持している.