地理学評論 Series A
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論説
戦間期の同業者町における取引関係と「調整」の変化——1914〜1940年の大阪・道修町の医薬品産業を事例に——
網島 聖
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2014 年 87 巻 1 号 p. 38-59

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抄録

近代日本の大都市内部では,工業と商業が密接に結びついた同一産業集積が展開したが,そこでは同業者の相互関係に基づく「調整」が集積の維持発展に重要な役割を担ったと考えられる.本稿は,大阪道修町の医薬品産業同業者町に着目し,近代日本の経済システムが変化した戦間期において,取引関係の変化が「調整」と集積のあり方にどう影響したかを検討する.第一次世界大戦による輸入医薬品の途絶により,国内医薬品業界は国産製薬業を本格化させる必要性に直面した.大阪の医薬品業界では,製薬業に進出した問屋を頂点とする流通系列化の構造的変化が起こった.これは,大阪道修町における問屋・卸売業者間の「調整」に影響を与え,同業者の協調的で水平的な関係に依拠した利害対立の「調整」が,系列ごとの垂直的で対立的な関係を踏まえたものへと変化した.戦間期において,道修町の見かけの集積は維持されたが,内実は製薬業の営業拠点集積へと変質した.

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© 2014 日本地理学会
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