地理学評論 Series A
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論説
1950年代後半の東京における「不法占拠」地区の社会・空間的特性とその後の変容
本岡 拓哉
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2015 年 88 巻 1 号 p. 25-48

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抄録

第二次世界大戦後,日本の都市には住宅難によって公有地を「不法占拠」した居住地区が数多く存在した.本稿の目的は1950年代後半の東京における「不法占拠」地区の社会・空間的特性とその後の変容過程を明らかにすることである.前者については,都市の不便な場所にあること,居住環境が劣悪であること,貧困層や社会的に排除された社会集団が暮らしていたことの三点に集約でき,当時の不良環境地区の中でもその特徴は際立っていた.また,「不法占拠」地区の住宅や居住者は住宅市場や労働市場に組み込まれており,都市において孤立しておらず,周囲の地域と関係を有していたことも考えられる.後者の変容過程については,1960年以降,多くの「不法占拠」地区が住宅地ではない土地利用に変化し,消滅する一方で,残存する場合もあった.また,地区の変容の時期や過程は一様ではなく,それぞれの地区の実態や都市における位置づけによって規定されていた.

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© 2015 日本地理学会
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