地理学評論 Series A
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論説
天然記念物塩川の湧出機構——短期集中観測と数理モデルによる定量的検証——
山中 勤
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2015 年 88 巻 3 号 p. 217-234

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抄録

国指定天然記念物である沖縄県の塩川は,水源で塩水が湧き出す特異な河川である.本研究では,その湧出機構を解明するための一助として,湧出量と水質の短期変動に焦点を当てた集中観測を行うとともに,降水・地下水・海水の混合と密度流を考慮した数理モデルを構築した.モデルによる湧出量および溶存イオン濃度の計算値は観測値とよく一致し,特に湧出量の日内変動に関しては潮汐の影響を加味することで良好に再現できた.以上の結果は,ドリーネのような直接浸透域に与えられた降水,石灰岩の亀裂などに存在する地下水,および海水とが地下洞穴内で混合して汽水を形成し,それと海水との密度差および湧水点と地下水面の高度差を駆動力として塩水が湧出するメカニズムを定量的に証明するものである.しかし,地下洞穴の大きさ・形状や水質の経年変化については不確定な部分もあり,今後長期間の観測データを用いてモデルの信頼性を向上させる必要がある.

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© 2015 日本地理学会
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