地理学評論 Series A
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黄土高原・陝西省呉起県農村における河岸地域の経済的優位性──呉倉堡郷の行政統計表を用いて──
原 裕太淺野 悟史西前 出
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2017 年 90 巻 4 号 p. 363-375

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抄録

中国の条件不利地域農村では環境保全と住民生活の改善の両立を目標に,耕地の緑化,実施者への有期の食糧・現金支給,農業の構造調整が実施されている(退耕還林).黄土高原ではこれまで行政村を単位とした郷鎮スケールの空間的な現状や問題点の検証は行われていなかったため,退耕還林による成果が均一に波及していない場所の特徴把握や,要因の推定,効率的な対処等が困難であった.本稿では,陝西省呉起県の一地域を事例に,各種社会経済データを用いたクラスタ分析を行った.行政村の空間立地に着目することで,河岸地域の経済的優位性が見出され,その要因として,現地での土地利用調査からトウモロコシ栽培やビニルハウスの導入などが推察された.一方で丘陵奥地の行政村では退耕還林による農業の構造調整後も,低い平均収入や高い生活保護世帯率などが課題として存在していた.

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