2018 年 91 巻 1 号 p. 62-78
広島市北郊で2014年8月20日未明に発生した土石流は山麓緩斜面に広がる住宅地を襲い,74名の犠牲者を伴う大災害を引き起こした.このような被害が発生した理由として,高度経済成長期における急速な宅地開発であると指摘されている.本稿では41名の犠牲者が集中した八木3丁目を対象に,撮影時期の異なる空中写真から作成したDSMを基に建物の建築時期を推定し,GISを用いて建築時期別に建物被害と土石流との関連について分析を行った.また,発災前にUAVを用いて撮影した範囲において,発災後に撮影を行い,それら画像からDSMなどを作成し,災害の状況を詳細に比較検討した.これらの分析結果から壊滅的な被害を受けた建物は,高度経済成長期以降に渓流の谷筋に建築されたものに集中したことがわかった.単純な高度経済成長期による宅地開発ではなく,土石流の発生危険度が高い地域に建物が建築され続けたことが,被害拡大の素因であることが明らかになった.