2020 年 93 巻 3 号 p. 204-220
本稿では,大阪府高槻市を対象に,異なる送迎手段による保育施設利用の実態を反映してアクセシビリティの推計方法を改良し,現状分析と将来人口に基づくシナリオ分析を適用した.その結果,2018年時点の対象地域においては,保育施設の需要と施設立地との間に,相当の空間的ミスマッチがある.とりわけ1~2歳では,市内中心部の駅周辺での供給不足が顕著である.また,公立幼稚園の認定こども園化による保育施設の増強は,一定の効果を有するが,現在の需要を完全に満たすには及ばない.一方,地域的な需給格差を緩和する上で,送迎保育は有効な補助的対策である.そして,将来発生しうる児童数の減少と保育需要の増加に対しては,未収容児童数の増加を招かぬよう,保育サービスの柔軟な供給調整が必要である.これらの知見から,本稿で提案したアクセシビリティ指標とシナリオ分析の手法の有効性も確認できた.