本稿では,茨城県南部に居住する在留フィリピン人の日常生活とカトリック教会との関係に着目し,宗教施設が有する社会関係の形成・維持の役割について解明することを目的とした.国内のフィリピン人人口構成をみると,1980年代から2000年代に来日し,国際結婚を通じ定住した女性層と,2010年以降に技能実習生として来日した若年層の2類型に区分できる.技能実習生は宗教的な目的に加え同国出身者との社会関係の構築を目的として教会に訪れている.また,国際結婚を経験したフィリピン人女性の多くは,定住の過程で転居・転職を繰り返していたため分散居住傾向にあり,地域社会や職場などにおいて社会関係を維持することが困難であった.そのため,カトリック教会で形成されたフィリピン人同士の社会関係は依然として重視されており,定住以降も宗教施設は在留フィリピン人社会における結節点として機能している.