地理学評論 Series A
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論説
近代移行期の京都における祇園祭山鉾行事の存続要因──都市–祭礼の関係性の再考──
佐藤 弘隆
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2022 年 95 巻 3 号 p. 194-220

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抄録

本稿は,都市と祭礼との関係性を,社会空間概念によって再考するものである.祭礼の運営集団は,都市空間(客観的社会空間)からの制約を受け,祭礼敷地(主観的社会空間)を認知することで,祭礼を構成するモノ・コトの創造に必要な諸資源を確保してきた.近代移行期の京都祇園祭の山鉾行事では,町組改正や屋敷所有の更新など,都市空間の急激な変化に対応し,各山鉾町の町中らは,運営集団としての主体性を維持しながら,祭礼敷地を再認知した.その結果,氏子区域全域による山鉾巡行の補助制度が再編されたり,個々の山鉾の復興に必要な諸資源の確保の基準が町内において再設定されたりして,山鉾行事は存続できた.祭礼敷地の再認知のプロセスは,地域文化を創造・維持・革新する場を創出する都市の機能といえ,都市と祭礼との動態的関係性を示すものである.このような祭礼の経験が,都市空間の中に蓄積されることで,その都市の特性や気風などを創造するのである.

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© 2022 公益社団法人 日本地理学会
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