地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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ISSN-L : 1883-4388
95 巻, 3 号
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会長講演
  • 村山 祐司
    2022 年 95 巻 3 号 p. 169-193
    発行日: 2022/05/01
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー

    深刻化する地球環境問題を背景に,衛星画像を活用した国土変容のモニタリングや地域分析が注目を集めている.特にデータが乏しい発展途上国では,都市環境の変化を把握する有力な手段として,空間情報技術を駆使した衛星画像解析が年々存在感を増している.地理学者には,汎用性のある地理空間データを創り出したり,精緻な分析手法を開発したり,新たな方法論を構築して地誌や地域研究に応用するなどして,実証研究の深化に貢献することが期待される.一方で,ビッグデータ活用時代を迎え,膨大な地理空間情報を瞬時に加工・分析し,結果を難なく可視化・流通させる空間情報技術の発展は,研究のあり方や伝統的な時間概念・空間概念の再考を地理学者に迫っている.さらに,集計的思考から非集計的思考へ,空間分析から時空間分析へ,バッチ処理からリアルタイム処理へ,モデル駆動からデータ駆動へ,仮説検証から仮説構築へと,従来の方法論からの転換を促している.

論説
  • 佐藤 弘隆
    2022 年 95 巻 3 号 p. 194-220
    発行日: 2022/05/01
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー

    本稿は,都市と祭礼との関係性を,社会空間概念によって再考するものである.祭礼の運営集団は,都市空間(客観的社会空間)からの制約を受け,祭礼敷地(主観的社会空間)を認知することで,祭礼を構成するモノ・コトの創造に必要な諸資源を確保してきた.近代移行期の京都祇園祭の山鉾行事では,町組改正や屋敷所有の更新など,都市空間の急激な変化に対応し,各山鉾町の町中らは,運営集団としての主体性を維持しながら,祭礼敷地を再認知した.その結果,氏子区域全域による山鉾巡行の補助制度が再編されたり,個々の山鉾の復興に必要な諸資源の確保の基準が町内において再設定されたりして,山鉾行事は存続できた.祭礼敷地の再認知のプロセスは,地域文化を創造・維持・革新する場を創出する都市の機能といえ,都市と祭礼との動態的関係性を示すものである.このような祭礼の経験が,都市空間の中に蓄積されることで,その都市の特性や気風などを創造するのである.

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