地理学評論 Series A
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論説
北海道外におけるアイヌの「記憶の場所」と先住民性
桑林 賢治
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2024 年 97 巻 6 号 p. 343-367

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抄録

先住民性をめぐる地理的想像力に反する空間での先住民による「記憶の場所」の構築がもつ特徴と意義を明らかにするために,本稿は東京の芝公園と沖縄の南北之塔を事例として,北海道外でのアイヌによる「記憶の場所」の構築過程を検討した.日本においてアイヌの先住民性を北海道と結びつける地理的想像力が支配的である状況を背景として,北海道外に立地するアイヌの「記憶の場所」の位置づけは不安定な状態に置かれてきた.他方で,アイヌは北海道外の空間と記憶に注目することが,彼(女)らが抱えてきた北海道内外での問題を解決する上で有効な手段であると認識してきた.その意味で,北海道外でのアイヌによる「記憶の場所」の構築とは,北海道外の空間をアイヌの先住民性に反するものとみなす抑圧的な地理的想像力と,同じ空間の中に権利と尊厳の回復をもたらす可能性を見出すもう一つの地理的想像力が,せめぎあう過程であったと理解できる.

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