地理学評論
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単一工業の立地とその地域効果
黒部市における1事例
村田 喜代治金田 昌司
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1960 年 33 巻 4 号 p. 193-205

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抄録

新市町村建設促進法により昭和29年4月に発足した富山県黒部市は,積極的な工業誘致政策を推進し,その結果,三日市製錬所,北陸製塩,吉田工業の3工揚の誘致に成功した.ここでは,わが国ファスナー生産高の85~90%を占める吉田工業 (YKK) を研究対象とした. 1) ファスナー生産は本来消費地指向性の産業であるにもかかわらず,黒部市に立地した理由は戦災による東京工場の消失,疎開地魚津における発展に必要な土地獲得の不成功に直面した時,黒部市が希望用地97,200m2を提供した点にある.したがつて,一般に立地論で指摘される輸送費,労働費,集積の基本的立地因子の有利性は発見出来ない. 2) 黒部市立地によつて生じる不利益を克服する手段として,これまでの手工業的技術を廃し,アメリカから輸入したチェーン・マシンを基礎とした,機械化・経営の合理化を遂行した.とくに一貫工程の採用は生産費の低下,対外競争力の強化,大量生産による有効需要の創造を可能ならしめた.結局,この企業のもつextemal diseconomiesをintemal economiesによつて相殺した点に発展の諸力が求められる. 3) 吉田工業が当該地域に与えた直接効果は,生産効果,雇用効果,財政効果に分けられる.

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