抄録
人造湖の水温成層は,自然湖の水温成層とはかなり違つている.その原因は,流入・流出量が人造湖では自恭湖に比較してかなり大であるということにある.表面水温の分布は風向によつて大きく左右されるが,それは風による湖流と大きな関係がある.人造湖においては,それに加えて,流入水による水の流れがその水温分布を複雑にする.そこで,水温分布の調査と同時に,湖水中における水の流動を明らかにし,とくに流入水がどのような状態で流入していくかについて,調査した.その結果,流入口付近で,明らかに密度流を形成して流入していくことが認められ,大量の流入水の存在は,貯水池の水温成層の形成にあたつて,上方からの熱の運搬よりも,横方向(流入水による)の熱の運搬を大にすることになる。躍層は2ケ所に認められ,上部のものは主として水温の日変化で生じ,下層の躍層は,ある水温をもつた多量の水が一時に流入することによつて形成されたものと考えられる.湖水中における水の流動は,風による湖流と流入水による湖流が一諸になつて,複雑な流れを示している.