地理学評論
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箱根火山北東部における軽石流の堆積とそれに伴つた地形変化について
鈴木 隆介
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1963 年 36 巻 1 号 p. 24-41

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抄録
火山地形を,その構成物質の堆積過程やそれの基底の地形と関連づけて,把握しようとする立場から,箱根火山北東部の軽石流堆積物からなる丘陵地(関本丘陵と仮称)を調査地域にえらんだ。本地域に発達する地形面や第四紀層,とくに軽石流堆積物の構成物質の場所的な変化傾向を詳細に調べ,軽石流堆積物の堆積過程とそれの基底の地形ならびに堆積地形との関係,さらに軽石流の堆積に伴つた地形変化について考察し,主につぎの結果を得た.
1) 本地域の軽石流堆積物は,層位的に二枚に分けられ,両者の堆積の間には,かなりの時間があつた。関本丘陵の主体を構成するものは,上位の軽石流堆積物であり,その堆積直前に,降下軽石が堆積した.
2) 上位軽石流堆積物は,軽石破片(石英安山岩)と石質破片(輝石安山岩)および両者の細粉から構成されている.両破片の大きさや構成比は,場所的に著しく変化するが,その変化傾向には規則性がある.すなわち,分布地域の中心をほぼ東西にのびる線にそつて,粗粒の石質破片が多量に存在し,その線から 南北に離れるにしたがつて,石質破片の大きさおよび単位面積あたりに含まれる個数はともに減小する。また,この東酉線上では,石質破片の大きさが西から東にむかつて減小する.一方,軽石破片は,石質破片に比べて,明瞭な規則的変化をしていない.
3) このような構成物質の揚所的変化が生じた原因は,つぎのような軽石流の流動・堆積機構によると考えられる.すなわち,軽石流が流下し,堆積するさいに,重力による沈積作用と,基底の地形の影響によ る流動エネルギーの場所的差異の発生(流心の発生)とによつて,石質破片は比重が大きいので,大きい破片は噴出口や流心に近い所で沈積してしまい,運搬される破片の大きさや量は,噴出口および流心から遠ざかるにつれて減小する・一方,軽石破片は比重が小さいので,石質破片に比べて,それらの影響を強く受けないから,噴出口や流心から遠い地点にも,粗粒の破片が運搬される.すなわち,前記の東西線は,軽石流の流心線を意味すると考える。
4) 上位軽石流は,箱根火山から古期外輪山の鞍部を溢流して,狩川の谷にそつて流下し,その渓口部から,箱根火山と足柄山地との間にあつた低平地に広がつて,関本丘陵の扇状の原地形を形成した.
5) 上位軽石流の堆積によつて,各河川は流路を変えた.とくに酒匂川は,せきとめられ,支流の皆瀬川の谷に溢流して,一種の弦状丘陵を形成したが,富士火山起源の火山砂礫層の堆積によつて,ふたたび旧流路すなわち現流路にもどつた.
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