地理学評論
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大佐渡沿岸の海岸段丘
太田 陽子
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1964 年 37 巻 5 号 p. 226-242

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抄録

大佐渡沿岸には数段の海岸段丘が発達しており,それらは高度,連続性などから第1段丘 (160~220m), 第2段丘 (80~140m), 第3段丘 (60~120m), 第4段丘 (35~70m), 第5段丘 (25~40m) および第6段丘 (5~8m) の6段に大別される.とくに,二見半島から大佐渡西岸には発達が顕著であるが,東岸にはきわめて断片的に小平坦面として分布するにすぎない.これらの中で第3, 第4段丘はほぼ全域に巾広く,また第6段丘は狭いが島全体をとりまいて分布する.段丘面の性質は地域によりかなり異なっている.すなわち,西岸ではおもに外洋における海蝕作用による海成段丘として,真野湾沿岸ではやや内湾的な場所で多少堆積作用も働いた結果の海成段丘として形成された.東岸では,急崖下の小規模なおし出し状隆起扇状地の性格をもつ所が多い.国中平野では,第2, 第3段丘は金北山下の斜面を流下する諸河川によって堆積された隆起扇状地であるが,第4段丘は,比較的厚い浅海堆積層の堆積面として形成された.なお第6段丘は全地域において海成段丘であり,温暖な fauna を含む厚い海成冲積層からなる国中平野の冲積面に続いており,日本各地で認められている冲積世初期の海進に基く地形であろう.第4段丘は冲積世海進前の海面低下期に先立つ比較的明瞭な海進期に形成されたものと思われる.
段丘面の性質の地域的差異を生じた原因は,西が緩やかで東が急斜面をもっという大佐渡の非対称な地形と,西側が外洋に面し,国中平野側が内湾的であったというような,後背地の地形および前面の海況などがおもなものであったと考えられる.このように,背後の地形や海況に著しい差異がある所では,岩石的制約は,火山岩地域などのような抵抗性の大きい岩石地域における段丘面上の stack の存在などとして現われてはいるが,段丘の形成には二次的な意味をもつにすぎないと思われる.
段丘の高度は,東西方向では大きな差異はみられないが,南北方向では島の両端から中央部に向って高くなり,しかも古い段丘ほどその傾向が著しい.おそらく第1段丘形成時(あるいはその前から)から島の中央部に軸をもつ撓曲的性格の上昇運動がつづき,その間に全域にわたる海面変化が繰返されて現在のような段丘の配列をみたのであろう.地殻運動と海面変化との関係についてはまだわからないが,少なくとも段丘面の高度の地域的変化を生じた原因は上述の示差的な地殼運動であるらしい.

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