地理学評論
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三島・沼津地区における工業化に伴う都市化の展開
高橋 伸夫
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1968 年 41 巻 1 号 p. 1-18

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抄録

三島・沼津地区での工業化段階に対応した都市化段階を,土地利用と労働力の側面から解明し,次の三期に時代区分した.
第I期(第一次世界大戦前まで)……工業の発展段階が低く,工業生産活動が都市化に及ぼす影響は,土地利用・人口構成とも微々たるものであった.都市化の進展は,工業生産以外の要因によっておし進められたが,その速度は遅かった.
第II期(第一次世界大戦から第二次世界大戦まで)……当期になって工業生産をリードしたものは,他地方資本企業で規模は大きく,都市化に影響する様相は第I期と異った.工場地化・工場関係住宅地化が,当期の土地利用における都市化に果した役割は大きい.しかし,地区内の農業従事者の労働力における都市化(工業労働者化)は顕著でなかった.
第III期(第二次世界大戦後)……前期よりも資本規模の大きい企業の工場が,他地方から当地区へ多数進出し,業種を多様化させ,生産力を増大させて工業生産をリードした.そして,それらは都市化に大きく影響を与え,土地利用・労働力の両面における都市化が,当期になってはじめて進展した.この都市化は強力かつ急激で,その影響は農業・商業に波及し,従前の工業化に伴う都市化の様相とは著しく異った.

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