日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝細胞腺腫と鑑別が困難であった肝細胞癌の1切除例
大石 幸一江藤 高陽福田 三郎角舎 学行先本 秀人高橋 信
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2008 年 69 巻 7 号 p. 1747-1752

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抄録

症例は80歳,男性.腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され入院となる.HBs抗原,HCV抗体は陰性で肝機能,AFPは正常範囲内であった.超音波検査で肝S2に4cm大の高エコーで境界明瞭な肝外突出型の腫瘍を認めた.腹部CT検査では単純で低吸収,造影により早期相で辺縁から徐々に濃染し平衡相まで遷延し,腹部MRIはT1強調像で低信号,T2強調像で高信号であった.画像診断では肝細胞癌が否定できないため肝外側区域部分切除術を施行した.肉眼的に被膜を有する赤褐色,単結節性の腫瘍であった.病理組織検査では細索状配列を示す異型性の乏しい肝細胞の増生を認めた.肝細胞腺腫との鑑別に苦慮したが一部に被膜外への増殖を認めたため高分化から中分化の肝細胞癌と診断された.肝炎ウイルスマーカー陰性,正常肝,AFP陰性であり,被包化された比較的異型性に乏しい腫瘍のため,肝細胞腺腫との鑑別が問題となった症例を経験した.

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© 2008 日本臨床外科学会
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