抄録
世に二重構造論なる議論がある.いわく,独占企業と中小零細企業の,近代と前近代の,繁栄と貧困の,二重構造.独占企業と中小企業は再生産構造からみれば一重の構造である.ただ存在するのは,原料独占か下請利用か,あるいは両者が無関係にあるか,という生産の迂回過程に独占企業が占拠する位置のちがいに,したがって両者の関連の仕方の相違にほかならない.
筆者は迂回過程の終点に大企業が位置する造船業をとりあげ,清水造船業の下請利用の態様を調査した.問題設定の性格上,造船業の下請利用のうち,社内下請と下請賃加工制に対象を限定した.まず,社内下請制を考察し,社内下請の地域性を規定している要因について述べた.また,下請工場の配置関係から,清水地区の造船下請工業がN社清水造船所の下請発注を十分こたえうるだけの発達をみていないことを実証しようと試みた.最後に,本研究の意図する問題意識を整理し,次の課題を明示した.