抄録
日本の私鉄はおおむね局地鉄道としての性格をもち,沿線地域の産業活動が鉄道の貨物輸送に直接反映する可能性が高い.このことから私鉄の貨物輸送の実態を全国的,総括的に把握するため,貨物運輸密度(1日1キロ当り貨物平均通過トン数)および輸送貨物の品目構成から明らかにしようと試みた.
考察の結果,日本の私鉄の大部分は貨物品目構成の上で,農産品または林産品,あるいはその両者の発送・および肥料の到着が大きい比率を占める1型(第1次産業基盤の私鉄),鉱産関係品の発着,あるいはセメントの発送が大きい比率を占めるm:型(第2次産業基盤の私鉄),およびI・III型の中間型であるII型の3者に分類することができた.I・II・III各型に属する線区数は調査私鉄113線区 (1955~56年現在,総数の83%に相当)中,それぞれ43 (38%), 17 (15%), 38 (34%)であった.また一般に貨物運輸密度の高い線区では第2次産業生産物およびその関連貨物の比率が高く,皿型に属し9第1次産業生産物およびその関連貨物の比率が高い線区では貨物運輸密度が低い.