地理学評論
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交通事故の地理学的研究
脇田 武光
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1970 年 43 巻 4 号 p. 223-243

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抄録

近年わが国で,重大な社会問題のひとつとなった交通事故について,地域との関係から地理学的アプローチを試み,交通事故と環境(自然・人文)の関係を明らかにするものである.まず交通事故の年別推移から,その要因として自動車数・人口の2つが明瞭に指摘され, 2要因の牽制し合う関係で事故が発生し, 2要因の中では若干自動車の影響力が人口の影響力よりも優位に立つ.事故の類型と原因が,わが国の道路の特殊性の反映であること.気候・天気も交通事故に影響することが認められ,特に高温多湿の夏に多くなる傾向があるから,日本はその点不利である.道路形状別交通事故の発生に地域差が認められ,複雑な地形の日本は道路形状に多大の制約を与えて不利になる.道路面積に対する事故密度は,東海道メガロポリスに高密度が卓越し,特に7大都市を中心とした交通事故の求心的集中が認められる.その反面,大都市の集中率は年々低下し,大都市から外周に向かう,交通事故の遠心的拡大を起こしつつある.わが国の交通事故で,大都市はその震源地的役割を演じている限りにおいて,さらに国別比較以上に都市別比較の方が,ここに提唱する交通事故率の格差が大きい.故にこの率で日本が世界最高になるのは,地形・気候等の自然的悪条件もあるが,最大の誘因は都市の交通環境がモータリゼーション時代にマッチしない点にあることを論じた.

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