地理学評論
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世界における死亡の季節変動形態の研究(第II報)
その緩慢化現象の地域差について
籾山 政子片山 功仁慧福田 勝久
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1970 年 43 巻 8 号 p. 445-463

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抄録
現代の死亡の季節変動形態は,大別して“冬季集中型”と“緩慢型”とになり,前者は日本及び西欧諸国に,後者は北欧及び北米大陸にみられる.しかも両形態は歴史的にみれば,それぞれ変遷を示し,冬季集中型はますます集中化し,後者は一層緩慢化する傾向にある.
一般にこれら地域の暖房様式の違いが,変動形態の相違を招来したと考えられる.即ち緩慢型地域は冬季の気温が零度以下の低温に達し,大規模暖房なしには環境に適応し得なかった.集中暖房,地域暖房による人工気候造りが,社会の進展につれて,本来の冬山低下,即ち緩慢化の形成を招来した.一方,冬季集中型地域は冬季も比較的温暖なため,室内の人工気候は却って寒:冷に経過し,相対的に冬山低下をはぽんでいる.夏山の克服につづく,冬山克服への努力が要望される段階に来ている.
また,詳細な地域的考察を行うと,見事な緩慢型を示すアメリカも文化的地域では緩慢化が著明だが南部の後進的地域,ことに黒人は冬季集中型を呈するなど地球差は顕著である.
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