地理学評論
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温室園芸地域の特産地化
松井 貞雄
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1971 年 44 巻 4 号 p. 241-253

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抄録
経済の高度成長下で日本の農業は階層分化して,地域的には産地規模が拡大し特産地化しつつある.この傾向を,温室園芸の側面から考察した。全国の温室面積のうち愛知・岡山・静岡の3県に61.7%が集積し,栽培作物はメロン・ブドウ・電照菊・カーネーションなどが特産地となっていて地域的個性が著しいが,加えて近年の温室園芸の伸びに対する大型産地の増加寄与率は著しく高く,日本の温室園芸は既成産地に特化している.調査地域を愛知県の花き温室園芸にとれぽ,温室農家の戸数増加よりは個別農家の規模拡大を主体として産地は大型化したが,大型産地である渥美電照菊温室園芸地域では共同出荷や温室の団地化など,地域ぐるみの対応として生産の組織化が進んでいる.これに対し,比較的需要が少なかった知多観葉植物温室園芸地域では,高級生花の大衆消費化を背景に少種類量産体制に変化して規模を拡大してきたが,栽培農家の散在的性格から生産の地:域的組織化はおくれている.
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© 公益社団法人 日本地理学会
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