抄録
侵蝕谷の谷壁斜面を火山灰が覆っている場合,火山灰中の傾斜不整合から,谷壁斜面の相対的な形成期が判ることがるあ.その観察の結果,次のような結論を得た.
大山山麓の侵蝕谷は5回の周期的な谷の形成期と形成休止期の繰返しを経て形成されたと思われる.形成期のうち,新しい3回は,洪積世後期の温暖期であると暗示される前後の時代,約書万年前の軽石流噴出時とその後の時代, 1.7~1.8万年前の火砕流の噴出から現在までの時代である.
侵蝕谷の谷壁は傾斜20°以上の急斜面と20.以下の緩斜面の2種類の斜面から成る.前者はガリ,または,崩壊により形成された斜面で,これは谷を深く,大きく成長させる作用である.後者を形成する営力は不明であるが,この作用は谷を埋積する作用で,前者と逆の効果をもつ.谷の発達はガリ性の急斜面の形成一急斜面形成の停止後の緩斜面の形成という過程で行なわれると思われるが,このような過程が各所で盛んにおきた時代が上述の谷形成期であり,これが5回繰返されたものである.
一方,谷壁の比高が40m以上ある場合には谷壁が不安定で,崩壊が現在まで継続し・緩斜面の形成される余裕がない.従って,このような谷では深い急峻な谷壁が卓越している.すなわち.大山の場合・谷壁比高40mを境にして谷の形成過程や形態に質的な相異がみられる.