地理学評論
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石狩平野の卓越風の分布について
大和田 道雄吉野 正敏
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1971 年 44 巻 9 号 p. 638-652

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抄録

石狩平野と勇払原野における夏と冬の卓越風について,偏形樹は約180地点について,農業気象観測所の資料は20地点において調査し,詳しい分布を研究した.その結果,次の事実が判明した.夏は, (1) 太平野側から吹き込んだ南風が,石狩平野の中央部を夕張山地に沿って北上し,さらに増毛山地をさけて北東方向に原野を北上する. (2) 一部は太平洋側から石狩平野の中央を通り北西へ向きをかえて,日本海側へ吹きぬける. (3) 他の分枝は太平洋側から馬追丘陵を夕張山地の間にある由仁安平低地へ吹き込む.冬は, (1) 日本海側から吹き込んだ強い北西の季節風が,南部は大谷地付近まで達する. (2) 日本海から吹き込んだ西風の東の限界は,そのまま夕張山地の山麓まで達している. (3) 西風は増毛山地を越えてから,夕張山地との間の原野を北東方向に転じて吹き込む. (4) 冬の風による偏形樹の示す風向は,地点によっては最多風向でなく,次多風向でかつ雪をともなう季節風であることもある.
なお,偏形樹から推定した卓越風の分布と器械観測による風の分布とはほぼ一致し,偏形樹の指標としての価値を検討することができた.

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