抄録
割替慣行は日本の諸地域にみられる.特殊な地域に採用される.従来の研究のように,地域を無視して単に経済的制度としての立場からこの慣行の真の姿をとらえることは不可能である.一般的には,この慣行は,水害その他の自然災害の頻発地域で,実際的な生産高は劣悪となり,米の単作に加えて重税の負担も加わり,零細な農民生活を強いられるような特殊な地盤に定着する.しかしその定着基盤のあり方やこの慣行の様式は地域によって著しい差異を示す.本稿に示す地域のこの慣行は,このような一般的な地域とは全く異なり,耕地面積は広く,現金収入の多い地域に定着する.このような例外的事例を通じて,この慣行の定着する地域的特性を解明し,これを背景とする定着の理由を探究しようとする.